シカの食害と対策について

query_builder 2021/11/24
害獣対策について
害獣対策

ニホンジカはこれまでの研究や、実証試験などにより、「馴れ」特性の強い動物とされており忌避音等による、害獣対策では、短期の効果はあるものの、長期・持続的な対策には難しいと指摘されています。
2019年10月~12月の3ヶ月間、シカの食害に悩む新潟県の某所で、シカ対策の実証実験が行われました。
その報告において、今後の忌避装置を考える上で、重要な示唆が多く含まれる実験報告であるためご紹介します。(報告書の抜粋を弊社なりに解釈して害獣対策装置として重要と考えられることを中心に紹介しております)
まず事前対策として、「野生シカの忌避反応」という基礎実証試験が、音源を対象動物への確実な照射、限定的な音場形成とコントロール性の点で優位な特性を有する超音波が利用できる指向性スピーカー(パラメトリックスピーカー)を採用することにより行われました。
対象動物シカの忌避反応の程度を判断するために、創作した忌避音を聴かせた時の警戒反応の度合いを定量化して忌避効果が減衰する過程を追跡するという方法で行われました。
結果を下記にしまします。
(1)忌避装置の音波に対して「定位(停止)」や「警戒」、「逃避」の反応を示しました。
(2)通常環境騒音の中に於いて忌避装置から30m~40m離れた位置で、シカが忌避音を認識してることを確認できました。
これは、忌避装置で採用しているパラメトリックスピーカーの下記に示す鋭い指向性の音波を発生させることにより忌避音源を有効にシカに届けることができました。
・パラメトリックスピーカーによる平面波の送出。
・高い周波数の搬送波(40kHz)による鋭い指向性。
(3)一方忌避装置の音波に対してシカの「馴れ」が生じ、忌避効果が減衰していくことも確認されました。この「馴れ」についてはシカの個体差があることが確認されました。
基礎実証実験での上記結果を受けて長期(3ヶ月間)のフィールド実験がおこなわれました。
方法は音波を搬送波として製作した電子音に対し、野生のニホンジカの行動を監視カメラで録画し、警戒反応がどのように変化していくのか長期の映像からその過程を観察するという方法で行われました。
その結果、音を利用した忌避装置に対する初期の忌避反応は認められましたが、その効果を継続して維持できないことが実証されました。
フィールド実験を通して、下記のシカの認知行動が観察され、また忌避装置の課題として提示されました。
1.シカの認知行動と忌避装置の課題
(1)今回の実験において、シカは、忌避装置が発信する音波に対して「定位」「警戒」ならびに「退避」等の明らかな反応を示すことは明らかになりました。
元来、シカの日常生活の中でとる警戒行動は、自然界における外敵が発する声や、経験等から自覚した危険な音源と強く結びつくと考えられますが、音源がもたらす音声がシカの認識範囲に無い音源を未知の危険性として認知している可能性があると考えられています
これは、実験で忌避装置から発信する音波を初めて聴音したときの反応、および音波を変更することによって減衰していた忌避効果が一旦回復することからも示唆されます。

つまり認識範囲外の音、聞き慣れない音に対して警戒度が高まると考えられます
(2)今回の実験結果の映像から、忌避音に対してシカが警戒行動を示す際、音の発信源を特定しようとする行動が確認されています。具体的には、馴れが生じ始めたと推察される2回目以降の聴音の時、忌避装置の方向を見る、また、忌避装置に近づく行動や、覗き込む素振りなどが観察されており、目視することで安全な物か危険なものかを判別しようとしているような様子が映像で確認されているということです。つまり、認識範囲外の音を経験した場合には、目視による安全かどうかの確認行為に及ぶものと推察されます。このことから、シカが忌避音に馴れていく段階において、忌避装置に対する考慮すべき点として、「シカに音源の特定をさせないこと」が挙げられます。
2.忌避装置による対応策の考察
(1)実験の中で、忌避反応を示す音源を特定する段階において、シカの認識範囲外の音波を聴音した時に示す警戒行動は、最初の聴音に対する反応度合と2回目以降に聴音した場合の反応度合は、確実に低下していくことが確認されています。
 すなわち音源に音圧の減衰や波形の変動は無いため、比較的忌避効果が望める複合波を選定しても、その効果には持続性がないということのようです。
これは、忌避音に対するシカの馴れを考慮する必要性を指摘している従来からの報告と同じです。
しかしながら、今回の実験では、複数の忌避音を用い、最初の聴音では忌避効果が確認できていることから、相当数の多種の音源を予め形成し、忌避装置に備えておき、その音源を無作為(ランダム)に発信する技法を構成することで、考慮すべき「馴れ」を抑制する可能性があると考えられます。
(2)想定される装置側構成としては、離隔する複数台の忌避装置を設置し、それぞれの装置から多種の音源を順次に発信することで、シカが聴音する際に発信源の位置を特定されないようにする動作をさせれば、馴れ抑制の効果を向上できる可能性があると考えられます。
(3)この実験報告では、多種の波形の組合せで形成する複合音は、一時的ではあるが忌避効果に対する有効性を確認できたと同時に忌避装置の実用化における要素と課題が明らかになったと述べています。
 要素としては
  ①高い忌避効果が望める音源徴を数値化して示す。
  ②音源種は、多ければ多いほど忌避装置に備える。
  ③無作為に発信できる装置動作。
  ④音源数を複数増加させる。
 を備えることで忌避効果の向上が期待でき、忌避効果を持続させることができる可能性があるとしています。
忌避装置を設置する場所における妨害音対策の確立の考慮を指摘しています。
自然環境下では、妨害音として激しい風雨がある時に発生する音や、河川や滝の水流音があり、これら妨害音に影響されない電子音を発生する装置の実現が肝要となります。

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