害獣対策(クマ編)

query_builder 2021/07/26
害獣対策について
害獣対策

日本国内におけるクマの被害のニュースが今年に入っても絶えません。クマは作物や果樹の被害だけでなく時には家畜や人間を襲う危険害獣です。
クマによる被害は、日本だけでなく米国・欧州にも古くからありその対策も様々試みられてきました。生態音響等の「音」による害獣対策も各国でいろいろ取り組みが行われています。
1.生態音響の合成バージョン(シンセサイザー)の製作
アメリカ・カナダの研究者グループが、放し飼い或いは野生のツキノワグマ、ヒグマ、ホッキョクグマを対象にして、数種類の合成音を含む生態音響発声に対する反応を調査・検証したところ、これらの生態音響は有害なクマを撃退するのに有効であることが検証されたと研究技報に発表しました。
研究グループはクマの反応と生態音響の種類の比較から、効果的なクマ撃退音に必要な要素を推測しました。
研究グループはまずホッキョクグマの雄2頭が餌を巡って対峙しているときの攻撃的な音(咆哮音)を録音しました。
録音された咆哮音は、周波数成分,包絡線,リズムパターン,持続時間について分析されました。
そして、元の咆哮音の周波数の構成要素を単純化、複製、誇張した7つの合成バージョンを作成しテストに供試しました。合成バージョンの生態音響は下記の要件の元作成されました。
(1)周波数成分は100~600Hzの範囲内で、約100、125、150、200、250、400、600Hzの主要な帯域に周波数分布があること。
(2)これらの周波数は150~300Hzの帯域を強調した周波数エンベロープに収まるようにする。
(3)出力-時間プロット(出力エンベロープ)は、比較的鋭いアタック(垂直に近い傾斜)2~4秒の一定領域、アタックよりも小さい音の減衰を特徴とする形状に適合するようにする。
(4)(1)~(3)のような合成音は約1~4秒の間隔で3~4回連続して繰り返し発声するようにする。
図1に合成音のモデルを示します。

2.野生動物の反応
飼育下のホッキョクグマ5頭,飼育下のヒグマ2頭,野生のツキノワグマ13頭,野生のホッキョクグマ18頭を対象に,これらの合成音に対する行動・反応を観察しました。
その結果,1つ以上の合成音で,実験した各クマに有意な忌避効果をもたらされました。
尚忌避効果の定義は,音が鳴っている間,即座に素早くスピーカーから離れ,継続して後退することとしました。図2に結果を示します。

             図2.生態音響の撃退率


実際の現場での音の出力は、スピーカーからの距離が短いと非常に大きくなり、それだけで退却の効果が得られる可能性があるので、スピーカーの出力は100dB/m SPL としました。
またテストのスピーカー出力が120dB/m SPLのとき、250mの距離にいるクマを追い出すことに成功しましたが、音を鳴らし続けた結果推定500mの距離までクマが後退したので、スピーカーの到達距離(退避効果に影響する距離)を推定250mとするため、スピーカ出力は100dB/m SPLでテストを行うこととしました。
対象となったクマの反応の中には、クマとの対峙において実用的な価値が低いと考えられる、例えば前進をためらったり、ゆっくりと後退したりする反応があったが、このような反応は退避効果があったと言えず、データ上は忌避反応無しとしました。
また,これらの合成音が飼育下のホッキョクグマの心拍数に与える影響を,心拍数送信機(FM送信機をクマに埋め込んだ)を用いて測定を行いました。
フィールドでの効果が最も大きかった4つの合成音は,飼育下の埋め込み型ホッキョクグマの心拍数を最も大きく増加させました。
上記試験のフィールドテストではこれらの合成音の「慣れ」は観察されませんでした。繰り返しテストを受けた4頭のクマは、テスト音(恐怖音)を学習して、テスト音を2回目に聞いたときに、より簡単に退避反応するように見えました。このような反応は、これらの動物が他の支配的な動物から恐怖・刺激を受け学習することがあるためだと思われます。
野生動物のこのような実際の攻撃的な出会い(生態音響撃退装置等で発声される)は、視覚的な表示や実際の物理的な打撃を伴うことが多いといわれています。
テストされた合成音は、クマの日常生活の中で学習した反応を呼び覚ます役割を果たしていると考えられます。
FMトランスミッターを装着した飼育下にあるクマの心拍数反応には「慣れ」が生じるとみられ、すべての合成音に対する心拍数の上昇は、3日間のテストで平均129回/分から110.6回/分へと14%減少しました。
飼育下における閉じ込められた状態で人の気配にさらされ続けたことで 恐怖音への反応が低下したと考えらます。
3.撃退装置への応用
生態音響(このテストの場合には合成音)には、従来のクマ対策にはない利点があります。
生態音響は害獣を駆除することなく、恐怖音を発声することによってクマと機器が実際に接触する必要はありません。
また、生態音響を発声する機器は電子機器であることから、クマの侵入を検知する機器との連携も容易です。
今後、実際の現場を想定したさらなるフィールドテストを経て、その有効性が明らかになっていくものと思われます。
生態音響を利用したクマ撃退装置を導入することで、危険なクマとの遭遇を減らし、駆除するしか選択肢がないような状況でもクマの生息環境を守ることができる可能性があります。
尚、弊社の撃退装置でも上記合成音を数種類作成し自然生態音響と組合わせて撃退音声としております。

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