害獣対策における超音波活用

query_builder 2021/05/26
技術的なことについて
害獣対策

日本においてシカ・イノシシによる農林業被害が増加しています.その獣害対策として超音波を野生動物に放射して追い払う試みが約20年ほど前から各自治体・農業試験所・大学等で行われてきました。その結果報告を参照しますと、超音波の単音の放射によるシカの退避行動への効果は殆ど無いようです。ただ、野生動物の聴覚を利用した生態音響(可聴域)の放射による効果は、日本を始め米国・欧州での報告が多数あります。このように生態音響での追い払いには効果が認められていますがその放射の音量を巡ってはいろいろな意見がありました。そこで弊社では、「害獣撃退装置」を購入された複数の購入者にお願いして、その音量を3段階で放射してもらい、追い払いで差が出るか調査しました。その結果イノシシ・シカ共に音量による差は特にない(監視カメラで確認したわけではなく、畑への侵入があったか、なかったかの問いに対して)ように思われるという回答を頂きました。その結果から考察しますと次の2点が考えられます。
1.イノシシ・シカとも野生動物として聴力は45kHz~80kHzの音を聞き分けられるとされており、人間の平均的な可聴域中心である300~3kHzよりも約20倍(音圧で26dB)聴力が良い為、非常にかすかな音でも撃退音声の効果として十分である。
2.生態音響のもともと持つ同種の個体への恐怖特性がかすかな音への警戒・退避行動につながった。
上記のように生態音響の持つ効果は非常に大きいですが、やはり周囲に対して騒音になるというお客様に対して弊社では、生態音響の放射にパラメトリックスピーカーを使用して、周囲騒音にならないような害獣対策を提案しております。
パラメトリックスピーカーは超音波を利用したスピーカーですが、その動作は超音波は生態音響のキャリア(搬送波)として利用されているため、人間には聞こえず(中心の狭い範囲では聞こえる)、超音波のエネルギーを収束(指向性がある)させている為確実に野生動物に届けられるというメリットがあります。すなわち超音波単音ではなく変調されるため、可聴域にある生態音響を伝達できます。
生態音響の研究が進む米国では、野生動物の追い払いに従来の火薬・花火による恐怖音を与える方法から生態音響で恐怖音を与える方式が広い州で採用されているようです

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