イノシシの感覚

query_builder 2021/08/08
害獣の生態について
害獣対策

イノシシは五感のうち、嗅覚、視覚、聴覚、触覚の4つの感覚を使って生活しています。 その内触覚は口を中心にしています。 指のある手のような手先の器用さがないため、イノシシは口を使って「物を触る」「つまん」で感じます。知らないものを目の前にしたときに、試しに噛んだりすることも珍しくありません。
1.イノシシの視覚
人間の目には、錐体と呼ばれる特殊な細胞があります。錐体は、青、赤、緑、そしてそれらの混合色など、さまざまな色を見ることができる役割を担っています。
部分的な色覚異常の場合、少なくとも1種類の錐体に欠陥があります。そのため、色弱の方の中には、特定の1色または2色が見えにくくても、他の色は問題なく認識できる方がいます。全色盲とされる方は、目の中のすべての錐体細胞に障害がある場合に起こります。これはまれなケースですが、色がまったく見えない(区別できない)状態です。
一方、イノシシは二色性視覚を持っています。つまり、人間が持っている3種類の錐体に対して、色を混ぜ合わせる2種類の錐体しか持っていないのです。簡単に言えば、イノシシは人間よりも短い波長の色のスペクトルを見ているのです。
イノシシは短い波長の光(青色光)をよく見ることができますが、波長が長くなるにつれて、光を視覚的に認識することが難しくなります。赤や緑の光は波長の長い光の部類に入るので、イノシシは認識するのが難しくなるのです。
光の波長はナノメートル(nm)で測ることができます。前述したように、波長が長くなればなるほど、イノシシは色を見にくくなります。
イノシシが色覚異常になるのは、波長が520nm~540nmになったときです。これは「緑」の色域の中心とされている範囲です。
狩猟用のナイトスコープでは、上記の特性で赤及び赤外線が最も使用されているようです。
2.イノシシの嗅覚
イノシシの嗅覚は五感の中で最も強く、捕食者やハンターから身を守る最良の防御手段のひとつとされています。イノシシはその優れた嗅覚で、弱い視覚を補っているのです。
イノシシの嗅覚が非常に強いのは、遠くからでも匂いを嗅ぎ取ることができるからです。鼻を通る匂いによって、イノシシは匂いの元に向かっていくか、できるだけ遠くに離れていくかを判断します。
ほとんどのイノシシは500~600m先まで匂いを感知することができ、それは匂いが風や微風によって運ばれていない場合でも同様です。風下にいるイノシシは、1.6km先まで匂いを嗅ぐことができると報告されています。
イノシシは目の前にあるものだけでなく、地面にあるものも嗅ぎ分ける強い嗅覚を持っています。平均的なイノシシは、ミミズや昆虫など、食べたいと思ったものを根こそぎ食べてしまうために、ひづめの下約1.7mまで嗅ぐことができるといわれています。
雨の中においても、イノシシの嗅覚はまだ強いのですが、雨のせいで周りの匂いがほとんどしなくなりイノシシが嗅ぎ分けられる範囲は狭くなり、水たまりができると地面の下からの匂いが遮断されます。
風はイノシシの最大の敵(弱点)とされています。風が強いときは、イノシシを見つけるチャンスが劇的に減少します。
それはイノシシは、捕食者やハンターが潜んでいるかもしれないという不確実性がある場合、快適な隠れ場所から出てこようとしないからです。通常、強風が収まるのを待ってから、再び外に出ようとします。
イノシシは風で匂いが運ばれてくれば、さらに遠くの匂いを嗅ぐことができますが、それは風が直線的で、一日の大半が一方向に吹いている場合に限ります。
実際には、風は渦を巻き、常に吹く方向が変わります。イノシシの嗅覚は最強の武器であるにもかかわらず、風のせいで周囲の匂いが常に不確かであるため、イノシシは嗅覚をうまく使うことが出来ないときがあります。
野生のイノシシは、動物の中でも最も強い嗅覚をもつ動物の一つで、砂浜の金属探知機のように鼻を使って宝物を探すように、どこに行っても常に嗅ぎまわっているのを見ることができます。
3.イノシシの聴覚

   

図にイノシシの聴覚を測定したグラフを示します。イノシシの聴力は32Hzから40.5kHzで、250Hzから16kHzに最高感度の領域があります。この表は、縦軸のレベルが約100ヤート(≒91m)先でどの程度のSPLを聴くことが出来るかという目安としても見ることができです。
表によると100ヤード先では250Hzから16kHzの30dB SPL(非常に小さなささやき声)にも反応(検出)するようです。
またイノシシは、何かを聞いたとき、その音の性質や出所を判断するまで、固まったり、警戒態勢に入ったりします。
自然界の定期間の一般的なノイズ(草木のなびき・ガサガサ音、岩の風切り音など)には反応は鈍くなりますが、そのノイズが一定期間持続する場合、退避することが知られています。
イノシシの聴覚は、茂みの中で他の動物の存在を検知するのに最も大きな役割を果たしていると考えられています。逆にこの感覚は、一般的な接触型の自身のうなり声を使って、茂みの中で同種の集団の接近を維持するのにも有効であるようです。

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