動物の鳴き声と聴覚

query_builder 2020/09/19
害獣の生態について
害獣対策

今年のイグ・ノーベル賞で爬虫類の鳴き声の仕組みを解析した研究が「音響賞」を受賞した。
ヘリウムガスを吸った状態のワニの鳴き声の周波数が通常の空気を吸った時の鳴き声に比べて高くなったそうで、このことは爬虫類も哺乳類や鳥類と同じく声帯から口までの間にある空気を振動させて声を出していることが確認されたという。
受賞者の先生は「この実験はすぐに何かの役に立つわけではないが、おもしろいと笑」っていただければそれでいいです」とおっしゃっておりましたが、害獣の生態を日々見聞している者としては非常に興味をそそられた。
進化の過程で水中から陸に上がった哺乳類・鳥類・爬虫類の共通祖先は、その時には鳴き声のコミュニケーションが出来上がっていたのかなとか想像してしまう。
害獣と呼ばれる野生動物たちも、この鳴き声でのコミュニケーションは非常に重要な生態でその鳴き声で、相手とのコミュニケーションをとり、共同体(ハーレム)を作り独自の生態を形成する。
その鳴き声や屋外に散らばる微かな様々な音(落ち葉の踏みしめ音、雪上の移動音等)を聞き分けるために、害獣は超音波域を含む40Hz~65kHzの音を可聴域とし、人間の10倍(20dB)以上の聴覚を有しているとされる。
我々人間が生活する空間には人から無数の様々な音が発せられている。
野生動物はこの人から発せられる音を注意深く聴きながら、人との出会いを避けながらひっそりと生息している。
害獣対策として、鹿や猪などの野生動物の狩猟数を高め、個体数を減らす努力は必要であるが駆除だけで個体数を制限することは困難である。
捕獲ばかりに力点を置き、加害する野生動物を捕獲したとしても、加害する野生動物を作り出しながら捕獲するという悪循環になるだけである。
したがって地域での害獣対策には、野生動物の生息域を制限することが重要で、耕作地に侵入できない環境を作る必要がある。
昔の地域では犬が放し飼いにされ、犬は野生動物の動きを聴覚により把握し、野生動物の侵入を阻止していたという。
少なくとも犬が聴覚を利用して野生動物の動きを把握できることから、野生動物から発せられる超音波域を含む音響を利用して野生動物の動きをモニタする研究も進められている。

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